ayasui 切絵展 「にごり水」 取材レポート

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第一回 「ayasui」のつぶやき

●裏「にごり水」 かく語りき

2月の開催が予定されるayasui切絵展「にごり水」へ向け、本日より6週にわたり「にごり水展」取材レポートをお届けすることとなった。

「事前情報があると当日の楽しみが減るんじゃないか?」
大丈夫。案ずることなかれ。本レポートでは展示の裏側、マイナーでディープな部分に焦点を当て作品自体についてはの記述は極力避けようと考えている。

展示会場へ赴く前に一読いただくことで「にごり水展」をより深く味わえる復読本ならぬ、復読コラムとなれるよう淡い期待と祈りを込め、早速始めることにしよう。

●とはいえ、まずは作家の作品について

にごり水展のレポートの構想を練り、何から語ろうかと考察した。
「作品には触れぬ」といってはみたものの、やはり作家にふれぬわけにはいかぬと考え、作家ayasuiの近況から取材することにした。

●2015年師走も差し迫る11月某日

ayasuiのアトリエを訪れた。作業台の上には幾種類の風合い、幾多の色味の紙片が折り重なり置かれている。傍らには既に完成と思わしき雄弁な花弁を開く花もあれば、中途にカタチを留めたままの花もある。
それらを目にした瞬間のワタシの感想を正直に述べると、僅かに動揺し彼女を案じた。
蛾・蝸牛・魚・トカゲ・カエルなど比較的ダークなモチーフを好んでもちいるこれまでの彼女の作品からみると、あきらかな方向転換であったからだ。

無論、方向転換がいけないのではない。

表現者のイマジネーションに制約はなく、無限に広がる想像力に任せ選びとるモチーフに変化があっても少しも変ではない。
だが、花々をみるといささか途中で止まった形跡のあるものが散見されるのが気がかりだった。
思案の末、ワタシは彼女へひとつの質問をした。

ー今回は思い切った方向転換があるんですか?ー

問いかけたことが正解であったのか、それとも触れてはならぬことなのか、判断に窮する空気が一瞬流れた後、彼女ははにかみながらもはっきりと言い放った。

「いやー、迷子になっちゃいました」と。 

次回 1月15日掲載 第二回へ つづく



(文 河内製作所:佐藤 大陸)

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「にごり水」会場のご案内

ギャラリー丸美京屋 〒110-0034
東京都台東区雷門2-10-5
丸美京屋店内2F
TEL:03-3841-9711
URL:http://gallerymarumikyoya.com/